ホルモン補充療法(HRT) 日本で普及率が上がらない理由

女性の体は、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン) という2つの女性ホルモンの働きによって、コントロールされています。
これらの急激な減少を補うための療法が、ホルモン補充療法(HRT)です。

HRTでは欧米では既に15〜20年の実績を持つ根本治療であり、更年期障害に対するスタンダードな治療法となっていますが、日本での認知度はいまだに低いまま。
普及率も先進国の中ではダントツ最下位です。
(光文社「負けるもんか49歳の崖!」p33より図表引用)
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ここからは私見です。

普及の遅れの理由は、医療側と受ける側(患者女性)両方にあると思います。

医療側の問題は、更年期障害への取り組み意識がほかの病気に比べて低いこと。
まあ、更年期障害で死にはしませんからねー。

女性特有の症状なので、女医さんや婦人科のお医者さんでなければ、簡単に考えているところがあるなーという印象を私は受けました。
患者側の問題は、ホルモン補充療法に対しての抵抗感やマイナスイメージ。

かつて「乳がんの危険性」について報じられたことがありましたが、それに過度に反応している部分もあるでしょうね。

 

今や3人に1人とも言われるがん患者。
早期発見、早期治療を呼びかけるも、なかなか死亡率も下がっていない様子。

芸能人が「乳がん」「子宮がん」と発表すれば、ここぞとばかりに検診を勧める世の中のムード。
ちょっと異常なくらい、がんへの恐怖がかきたてられているような気がするのですが・・・

そういう世相ですから、ほんの少しでも「発がん性」「がんのリスク」という可能性が取り上げたら、拒否反応へとつながるのも仕方がないかもしれません。
しかし、怖い報道とは別に、安心材料についてはあまり積極的に報じられていないのが現状です。
すでにHRT実施中の人には周知の事実ですが、検討中の方のために公的なソースをご紹介しておきます。

HRTと乳がんの発症リスクについては、5年以内の使用ではまったく見られず、7年以内でも明らかなリスクはないという解析結果が出ています。特にERT(エストロゲン単独投与によるホルモン補充療法)では、乳がんの発症は減るという報告も増えています。(女性の健康とメノポーズ協会 HPより)

日本国内では2004年に、「ホルモン補充療法が乳癌の診療に及ぼす影響とその対策に関する研究」(厚生労働省癌研究助成金による研究)が実施され、HRTと乳癌との関連性については否定的な結果が報告されている。(日経メディカル 2009/2/12 癌Expertsニュース より)

この10年ほどでHRTと乳がん罹患率に関する研究が進み、「5年以内では乳がんのリスクはない」が、世界の基本的認識となっている。日本女性医学学会と日本産科婦人科学会が刊行した『ホルモン補充療法ガイドライン』(2012年度版)でも、HRTは、5年以内では乳がんのリスクは上昇せず、また、黄体ホルモンを併用すれば、子宮体がんのリスクも上昇しない。黄体ホルモンが、エストロゲンによる子宮内膜増殖を防ぐからだ。(AERA 2013年7月1日号 より)

・・・「乳がんのリスクが高くなるよ」とビビらせておいて、その後の調査で「大丈夫みたい」という結果についてはあまり報道されなかったみたいですね。
医療従事者のみならず、世間全体の認識は「なんかよくわからんけど、コワイからやめとこ」で止まってるのでしょう。

正しい知識が身を守る。
これは、更年期のみならず、すべての健康と病気に関して言えることだと思います。
何かいつもと違う症状が出たとき、それは体からのメッセージです。
既存のイメージや周囲のうわさに流されず、原因を自分なりに見極めて「自分で情報を取りにいく」という姿勢が、結局は自分を守ることになるのではないでしょうか。

啓蒙してHRTを広めようなどとは思っておりません。
でもHRTの情報を知らないまま、つらい毎日に耐えている女性を見るたびに、世の中に浸透していないことを残念に思います。
日本では自然分娩が王道で、欧米の無痛分娩は邪道みたいなとらえ方されてますよね。なんだかそれと似ている気がします。

これから更年期を迎える、あるいは真っ最中のすべての女性が、医療を賢く利用して輝く笑顔でいられますように!




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