耳鳴りQOL改善 病院・クリニックで行われる7つの治療方法まとめ

「耳鳴り・めまい」の解決(QOL改善)方法は数多く存在します。
その中でどの方法を選ぶかは、その病院のお医者さんの経験則によります。
一人のお医者さんの指示に従ってみてダメだったからといって、もう方法が無いというわけではありません。
医者まかせにするのではなく、患者自身が自分の病に積極的に向き合うことが大切だと思います。

各種書籍やネット上の情報を調べ、症状をやわらげる効果があると言われている選択肢7つをまとめてみました。

  1. 薬物療法
  2. マスカー療法
  3. 混合ガス療法
  4. 鍼治療
  5. 星状神経節ブロック
  6. TRT 耳鳴り再訓練療法
  7. 心理療法

【参考文献】
耳鳴り・めまいを治す本―あなたは自分の症状にきちんと合った対処をしているか(1999/5)
石井正則 (東京厚生年金病院耳鼻咽喉科部長)/村上 正人 (日本大学板橋病院心療内科院長)
難聴・めまい・耳鳴りを解消する(2003/7)
神尾友和(神尾記念病院院長)/相原康孝(神尾記念病院副院長)
【参考サイト】
ヘルスケア大学 http://www.skincare-univ.com/article/009994/
シバントス株式会社 https://www.bestsound-technology.jp/
ワイデックス株式会社 https://japan.widex.com/


 

【1】薬物療法 →神経や筋肉の働きを改善

◆脳代謝改善薬・脳血流改善薬
・ニセルゴリン(サアミオンなど)
・イブジラスト(ケタスなど)
・カリジノゲナーゼ(カリクレインなど)
・アデノシン三リン酸ニナトリウム(アデホスなど)
脳の動脈硬化が影響している場合に用いられます。

◆ステロイド薬
・プレドニゾロン(プレドニンなど)
急に難聴が起こった場合、炎症を抑える目的で一時的に投与されることがあります。

◆抗不安薬・抗うつ薬
・抗不安薬 ジアゼパム(セルシン、ホリゾンなど)
・抗うつ薬 スルピリド(アビリット、ドグマチールなど)
めまいや耳鳴りは、不安感が強い時やうつ状態のときに強まる傾向があるので、精神面での安定を促すことで改善されることがあります。
とくに抗不安薬は筋肉や神経、血管の緊張をやわらげる作用があり、耳鳴りによく効くことがあります。

◆自律神経調節薬
・トフィスパム(グランダキシン)
自律神経のバランスの乱れを改善する作用があります。自律神経失調症や更年期障害の症状として現れている場合に有効です。

◆ビタミン剤
・メコバラミン(メチコバールなど)
末梢神経の働きを改善する作用をもつビタミンB12の製剤。めまい・耳鳴り・難聴の改善に処方されることが多い薬です。

(↓耳鳴り治療中の友人が病院から処方されているお薬)

◆筋弛緩薬
・塩酸エペリゾン(ミオナールなど)
肩こりや頭痛をともなうめまい・耳鳴りの場合によく使われます。

 

【2】マスカー療法 →音を制する

別の音を聞いて耳鳴りを覆い隠す(マスキングする)方法。

耳鳴りに悩む人の約60%に効果があるという調査報告もあります。

まずは耳鳴りの検査を行い、耳鳴りの周波数や大きさを調べます。
その周波数に近く、耳鳴りより少し大きい雑音で耳鳴りが聞こえないようにします。
イヤホンを装着し、1〜2時間雑音を流します。
雑音を聞いている間はもちろん聞くのをやめたあともしばらくの間、耳鳴りが聞こえなくなったり、気にならないほど小さくなることがあるそうです。

◎雑音を流す専用の機器
周波数(音の高さ)や音量を調節できるマスカー用の機器があります。医療機関によっては貸し出しているところもあります。

◎身近なもので代用
ラジオのノイズ…ラジオ局の周波数に合わせる途中のザーザー音
テレビのホワイトノイズ…いわゆる「砂嵐」の画面にしたときの音
音楽…種類は問わない。聞いている間、耳鳴りが気にならなければよい

 

【3】混合ガス療法 →内耳の血流を良くする

二酸化炭素には血管を広げる作用があることがわかっています。その特質を利用する治療法が「混合ガス療法」。
「混合ガス」を吸入することで内耳へ流れる血液が増え、難聴や耳鳴り、めまいなどの症状の改善が期待できます。

◎病院での治療の様子
ベッドに横たわりマスクをつけて吸入するだけ。
混合ガスに軽い催眠作用があるため、リラックス効果も得られます。副作用の心配はありません。
通院しながら1回30分で1日1回、10日間ほど続けて受けると、症状改善の効果が認められる例があるそうです。
混合ガス療法は、実施している医療機関が限られているので、治療を希望する場合は各医療機関に問い合わせ実施しているかどうか確認しましょう。

 

【4】鍼治療 →東洋医学で体全体を調整

東洋医学では、体の中を流れる「気・血・水」の」乱れが病気や不快症状をまねくと考えられています。
ツボはその乱れを調整する重要なポイントです。

耳だけでなく体全体のバランス(自律神経)を整える鍼治療で症状が改善される場合もあります。
また、耳周囲のツボ刺激で内耳に送られる血液量を増やし、血液循環を改善する方法も効果的。

治療にかかる時間は1回30〜60分程度。鍼治療に使われるハリはごく細いものなので、痛みはありません。

使い捨てのハリを使用している治療院が多く、感染などの心配はありません。
保険適用外なので病院での治療よりも高額になりがちですが、病院で原因不明と言われた方は試してみる価値があるのではないでしょうか。

【5】星状神経節ブロック →神経を一時的にマヒ

ペインクリニックや麻酔科で受けることができます。

本来、肩・首・腕の痛みを軽減するための治療ですが、耳鳴り改善治療として参考文献(神尾記念病院院長・監修)に掲載されていたので紹介しておきます。

星状神経節は、頭部や顔面、首や肩、腕などを支配する交感神経が集まったところ。
ここに少量の局所麻酔薬を注入して一時的にマヒさせると、交感神経が遮断され、緊張が緩んで血管が拡張します。
内耳や脳への血流が改善したり自律神経のバランスが整うことで不快症状がやわらげられることがあります。

効果の現れ方は人によってまちまちですが、1〜3日おきに通院し、平均30回程度で改善が見られるケースが多いようです。

方法は、のど仏の横あたりに注射をします。

細い針を使用するので、個人差はありますがチクッとする程度でひびくような痛みはないそうです。注射のあとは30分ほどベッドで休みます。

 

【6】TRT →耳鳴りに順応する

Tinnitus Retraining Therapy=耳鳴り再訓練療法
耳鳴りの音に順応するように脳を訓練する方法で、補聴器のような形をした機械をつけて訓練します。
TRTのための機械は、TCI(tinnitus control instrument;耳鳴り制御機器)、サウンドジェネレーター、ノイズジェネレーターとも呼ばれています。

この治療法で目指すところは、耳鳴りに対しての順応です。
耳鳴りの悪循環から完全に抜け出て、比較的静かなところでは耳鳴りは聞こえても、耳鳴りが全く気にならない状態を目指しています。耳鳴りに慣れるだけで治るわけではありません。

治療に長い期間が必要であること(1年、2年は当たり前)と、高額であることがデメリット。時間とお金がかかっても確実に改善されるとは限らないようですが、その療法がぴったり相性が合えば効果が見られるようです。
TRT療法を実施している病院
(リンク先:全国のクリニック・診療所・医院・病院検索サービス「病院なび」)

 

【7】心理療法

ストレスがからんでいる耳鳴りの場合は、薬を服用してもすぐに再発することが多く、不安を抱えたまま長い間耐え続けている患者さんも少なくないそうです。
そんな方には、精神的な角度からのアプローチが良いかもしれません。
心療内科に相談すると以下のような療法で解決を手助けしてくれます。

●一般心理療法

一般心理療法は、「受容」「支持」「保証」の3つの柱で成り立っています。

「受容」…患者のつらい症状を医師がきちんと理解して受け止める
「支持」…その症状や病気についてくわしく説明
「保証」…病気のためにふさぎがちな患者の気持ちを支える

これは心理的な要因で引き起こされるさまざまな病気に用いられる基本的なメソッドですが、心療内科では耳鳴り・めまいにも有効とされています。

●バイオフィードバック療法

心身が緊張していると、皮膚温度が高くなったり心拍するが増えたり汗をかいたりと、さまざまな生理反応が起こります。
バイオフィードバック療法は、そのような生理反応を光や音、メーターなどのわかりやすい形に変えて患者さん自身にフィードバック(戻す)する療法。

どのようなときにどの程度自分が緊張し、どうすれば緊張がとけるのかを確認します。
訓練を重ねると、やがて心身の緊張をセルフコントロールできるようになります。
耳鳴りの場合は、この訓練で緊張をゆるめるコツをつかみ、耳鳴りやめまいが起きる前にからだの緊張を解くことを身につけます。

●行動療法・認知行動療法

専門のカウンセラーや心療内科の医師との会話で、ストレスとなっている物事や行動パターン、心理状態を見極め、好ましくない点を少しずつ修正して耳鳴りが起きにくい本来の生活スタイルに導いていくという療法。

本人はストレスと自覚していないだけで、実は心身に無理をさせていた、ということが、カウンセリングで明らかになることがよくあります。
検査結果には現れない深層心理に解決の鍵が隠れていることがあります。

 

耳鳴り専門外来 一覧

上記で挙げたような治療が受けられる、耳鳴りの専門外来医療機関リストです。
https://japan.widex.com/ja-jp/hearing-loss/tinnitus/tinnitus-hospital
(リンク先:補聴器メーカー ワイデックス社のサイト)
ご近所の耳鼻科での治療を続けてもなかなか改善しない…という方は、一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。
予約や紹介状が必要なこともあるので、事前に電話等で問い合わせてからが良いでしょう。

 

その他、自分でできること

●筋弛緩法

首や肩を5秒間、ぴーんと張って力を入れて緊張させ、そのあとスッと力を抜いてだらんとします。
そのまま10秒間以上休みます。

《例》・あごを上に上げて緊張→首筋の力を抜いてカクンとあごを下げて休む
・真横を向いて緊張→力を抜いて正面を向いてあごを下げて休む
・指を組み頭の後ろに置き、首をそらせて緊張→あごを引き、首をだらんと倒して休む

いつでもどこでもできるリラックス法です。
仕事や家事の合間にもオススメ。とてもスッキリしますよ。

 

●自律神経訓練法

自己暗示によって心身をリラックスさせる方法で、心身の緊張をほぐし、疲労回復を促す効果があります。
自律神経失調症の代表的な治療法で、耳鳴り・めまいにも有効とのこと。
やり方は心療内科で指導されることもありますが、単純なので自分で好きな場所で取り組むことができます。
「快眠推進倶楽部」リラクゼーションのすすめ〜自律訓練法
(リンク先:名古屋第一赤十字病院心療相談センター長監修「快眠推進倶楽部」)
気功やヨガの瞑想にも似ています。
精神安定が神経の緊張をほぐし、体の不調を正常へと整えてくれると思います。
気功瞑想については当サイトで多数記事がありますのでご参考にどうぞ)

 

●生活習慣を改善

内耳の血流をよくすることが大事です。
そのための良い生活習慣、悪化させる代表的な生活習慣を列記します。

体を動かす
ゆっくり入浴する
晩酌を楽しむ
×運動不足
×過剰なストレス
×喫煙

ストレスが筋肉を収縮させ、血行を悪くすることは今や広く知られています。
逆を言えば、リラックスできることであればすべて血行を良くします。
アロマや音楽、瞑想など、気持ちがいいと思えることを意識的に行うとよいでしょう。
耳鳴りを含むさまざまな不調を解決することが期待できます。

→アロマで更年期の自律神経を整える

→海外セレブもはまる瞑想。アンチエイジングに効果あり

 

まとめ

耳鳴りは原因を調べてもよくわからないケースが多いため、病院を転々としたり薬やサプリを次々試す「治療難民」となる人が多いと聞きます。

なかなか改善が見られなければ、一生このままなのかと精神的にふさぎこんでしまうのも無理ありません。
また、耳鳴りは周囲から見て気づかれにくく、命に関わる問題ではないと軽視されがちであることも孤独感を招き、ストレスとなってしまいます。

本当は耳鳴りのために集中力を失いやすく、行動も不安定。
平穏な気持ちでいられないため、いかなるときもリラックスできないという生活の根底を揺るがす状況であるのに、「原因不明」や「老化だから」、「そのうち治る」と軽く扱われてしまう理不尽さ。なった人にしかわからない苦しみだと思います。

45歳の頃に耳鳴りを診断され、以来8年にわたり症状と闘い続けている友人がいます。かかりつけの耳鼻科によると、更年期による影響かもしれないが、結局原因不明とのこと。

さまざまな方法を試してみたそうですがいまだに良くならず、春と秋には必ず症状が強くなると言います。
今ではその症状を受け入れ、もうあきらめたと言っていますが、できることなら良くなってほしい。なんとかその友人の力になりたくて、いろいろ調べてまとめてみました。

私が得た知識は、主に耳鼻科専門医の書いた書籍からですが、いま民間レベルでも研究が進んでおり、これから医療の進歩とともにさらに開発されていく領域だと思います。

 

最後に、参考書籍からの心強い一言を引用して終わります。

ストレス性の耳鳴り・めまいは、時間はかかるが必ず治る
(「耳鳴り・めまいを治す本 ―あなたは自分の症状にきちんと合った対処をしているか」p120より)

原因不明と言われた耳鳴りならば、「ストレス性」の可能性が高い。
そうであれば、「必ず治る」。大丈夫です。

症状が快方へ向かいますように!心から願っております。

ご参考になれば幸いです。

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